独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「残りも少しずつですが、必ずお返しします」

「お見合いの日、破談にすれば一億円の返済は不要だと母は言ったが、こちらからお金を振り込んだ時点で返してもらおうとは思っていないよ」

透哉さんは透哉さんのお母さまの本心を言い添えた。

「それでもどうか受け取ってください」

私には人さまからただでお金をもらう行為はありえず、返済しないままではいられなかった。

「俺たちはもう家族なんだから、他人行儀はよしてくれ」

「他人行儀では……」

「とにかく俺は受け取る気はない」

透哉さんは頑なに返済を拒み、私は困惑した。

「それよりも、今から婚姻届を提出に行くからサインしてほしい」

透哉さんは私をリビングに導いた。

ソファ前のテーブルには書類とペンが用意されていて、私は面食らう。

「結婚式は半年後だと言っていましたよね?」

「ああ。式は半年後だが、入籍は先に済ませたい」

私は入籍も半年後だと思っていたのだ。

婚約届はもう私が記入すると提出できる状態になっていた。証人欄には彼のお父さまとお母さまの署名がある。

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