独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「はい、大丈夫で……」

否定しながらよろめいた私を、森窪さんがとっさに支えてくれる。

「おっと」

「す、すみません」

がっしりとした腕に抱きとめられ、私は露骨に動揺した。透哉さん以外の男性に触れたのは初めてだった。

「なんか心配だし、俺ももう帰るところだから車で送ってくよ」

森窪さんは私に有無を言わせず駐車場に向かった。

とっさにあとを追うと住所を訊かれ、真っ赤なドイツの高級車の助手席に乗せられる。

私がおろおろしているうちにも、マンションの車寄せに到着した。ほんの十数分ほどだった。

「ありがとうございます。助かりました」

なんとか透哉さんより先に帰れたようで、結果的に森窪さんに感謝した。電車やバスを利用していたら間に合わなかっただろう。

「どういたしまして。つーかさ、玲於奈ちゃんが言ってたけど、真崎さんの旦那さんってとんでもない御曹司なんだろ? なのになんでお金が必要? 旦那さんに内緒でイケナイことでもしてんの?」

唐突に問われ、きょとんとした。

「それは……」

< 86 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop