独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「透哉さん?」

外側からドアノブに手をかける彼が見え、私は全力で森窪さんを振り切る。

「琴子、その人は?」

車を飛び出すと、透哉さんは車内にいる森窪さんを見下ろしながら私に尋ねた。

「……アルバイト先のオーナーです」

「ああ、玲於奈の友人の?」

「はい。遅くなってしまったので送ってくださったんです」

「そうだったのか。はじめまして、琴子の夫です。いつも妻がお世話になっております。本日はわざわざありがとうございました」

透哉さんは状況を把握すると、いつも通りの優しい表情で森窪さんにお礼を言った。

どうやら私が森窪さんに顔を触られていたのは見られていなかったようだ。

「はじめまして……いえ、こちらこそ」

森窪さんはどこか腑に落ちない様子で、首を捻りながら透哉さんに挨拶を返した。

「では森窪さん……、お気をつけてお帰りください。お疲れさまでした」

透哉さんの前だから、私は何事もなかったかのように森窪さんに声をかけた。

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