独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい

「えー、じゃあマヤちゃんでいいや。今夜どう？」

森窪さんは楽しそうにマヤさんに絡む。

マヤさんはべーっと赤い舌を出した。

「絶対嫌でーす。てか琴子ちゃん、オーナーってセクハラ多めだけど、実際は従業員には手を出さない人だから安心してね」

「うわ、ばらすなよ。もうちょい真崎さんをからかいたかったのに」

「残念でしたー」

マヤさんは笑いながらバーカウンターへ向かった。

どうやら森窪さんは私になにかしらの感情があるわけではなく、ただのチャラチャラしたスキンシップ過多な人のようだった。

「つーかさ真崎さん、この間車に乗ってるとき、助手席の窓にものすごい衝撃があっただろ？　あれってなんだと思う？」

不意に訊かれ、私は首を傾げる。

「そういえば窓が割れるかと思いました。なにかがぶつかったとか？」

でも外にはなにも落ちていなかった。

「俺はあれ、真崎さんの旦那さんが俺にぶち切れて窓を叩いたんだと思ってるけど。俺に挨拶したとき、にこにこしてたけど目が怖かったし」