独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
「妻は本日限りで辞めさせていただきます。なにかあれば私のほうにご連絡ください」

透哉さんは森窪さんに名刺を渡すと、すぐさま私を連れて店を出た。

雑居ビルの正面に停まっていた車の後部座席に押し込まれる。運転席には透哉さんの秘書がいて、透哉さんは私の隣に座りながら、「午後の予定はすべてキャンセルだ。自宅に戻る」と短く告げた。

「透哉さん、どうしてここに……?」

車が動き始めると、私はやっと声を発することができた。

彼は氷のように冷たい目を私に向ける。

「どうしてだと? 一昨日あの男と親密にしているところを俺に見せつけておいて、よくそんなことが訊けるな」

「え……?」

「あまり夫を見くびらないほうがいい」

私は息を呑んだ。透哉さんを見くびったことなんかない。静かに怒りを滾らせる彼は、いつもとまるで別人だった。しかも一昨日の出来事をすべて見られていたなんて、私は今まで知らなかった。

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