隣の圏外さん

体育祭終了後



 教室へ向かう途中で、梓の姿が見えたので声をかけに行く。


「お疲れ様。リレー、速かったね」

「おう、お疲れ様。ありがとな」

 梓は笑顔で返してくれるものの、元気がなさそうだった。

 どうしてだろう。


 その様子を見て、なんとか励ましたいという気持ちが湧いてくる。


「凄かったよね! 一気に追い上げてさ。思わず手に汗を握って応援しちゃったよ」

「うん、聞こえた。永瀬の声」


 梓はそう言った後、片手で自分の顔を覆った。


「はー。だから頑張ったのに、俺。結局抜かせなくてだせぇ」


 まさか、落ち込んでいる理由ってそれなのだろうか。

 凡人には理解できない嘆きである。

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