隣の圏外さん
「2人も追い抜いたじゃん! 最後もあと1歩まで詰めていたしさ。1人も追い越せないのが普通だよ? もし走っているのが私だったら、追い抜くどころか最下位になっちゃっていたはずだし! それに、追いついたってことは、梓が1番速かったってことでしょ。 ……かっこよかったよ、梓は」
とにかく凄かったということを伝えたくて、一気にまくし立てた。
最後は恥ずかしくて小声になってしまったけれど。
「ふっ」
笑った梓の吐息が漏れた。
「ありがとう。励ましてくれて」
梓はそう言って、顔を覆っていた手を下ろした。
目が合う。
よかった、ちょっと照れくさそうだけど、いつもの梓だ。
そのようなことでしょげていたのかと思うと、なんだか可愛く思えてきてしまう。