隣の圏外さん


「親御さんはいらっしゃったんですか?」

 2年生の先輩が田中先輩に尋ねた。


「そうそう。来てたんだけど、帰ったら開口一番で『凄くよかったよ、実況アナウンスに向いているね!』だってさ。笑っちゃうけど、そんなもんだよね」


「うちの親も手のひらを返してくることがありますよ。わかります」

 2年生の先輩は共感を覚えたようでうんうんと頷いている。


「いやーそりゃあ美人じゃないと厳しいし、言いたいことはわかるんだけど、言われなくてもわかることに関してはそっとしておいてほしいよね」

 そう言って田中先輩は口を尖らせた。


「まあ、それで楽しくなったし結果的にはよかったな?」

 部長がニヤリと笑った。


 そういうことだったんだ。

 部長の言う通りで、それで周りを楽しませることになったのが田中先輩の凄いところである。

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