隣の圏外さん
「大会を見に来ていたんだから、アナウンスが素敵でしたーとか、俺も先輩みたいに頑張りますーとか、いろいろあるだろう。倫太郎がそんなことを言うのは想像できないが」
部長は苦笑いを浮かべた。
「まあ、大会に出ようと思うほど心境の変化があったみたいですから、そこに書いていないだけで、先輩から良い刺激を受けているのでしょうねぇ」
顧問の先生の言葉に、皆して目を丸くする。
「常盤君、今度の大会は出ないって断ってましたけど」
私がそう言うと、先生は不思議そうな顔をした。
「やっぱり出ますってこの間職員室まで言いに来てくれたわよ?」
その場にいた全員が常盤君を見た。
「倫太郎ー!」
部長が真っ先にわしゃわしゃと常盤君の頭を撫でた。
それに続いて、田中先輩も常盤君を突く。
「倫太郎ー! 私も思い残すことないわあ」
「うわっ。暑苦しっ」
「素直じゃないなあ、倫太郎は」
部長はまだ常盤君の頭を撫でていて、とても嬉しそうだ。