隣の圏外さん
常盤君も、大会に出るんだ。
一緒に挑戦する人がいる。
それだけのことで、今までずっとそばにあった、わけもわからずさ迷うような感覚がどこかへ行き、こんなにも心強く感じられる。
「それならそうと早く言ってくれればいいのに」
私がそう言って口を尖らせると、常盤君は平然とした顔で「忘れてた」と言って首に手を当てた。
「ツンデレか? 倫太郎」
「ツンツンデレデレだな? 倫太郎」
また部長と田中先輩が常盤君をいじっている。
「いやデレデレはしてないでしょ。ツンツンしてるつもりもないけど」
常盤君は半ば呆れ顔で返した。
こんなやり取りを見れるのも、これで最後かあ。
そう思うと、しんみりした気持ちになってしまう。