隣の圏外さん
「あの、先輩。本当にいろいろ教えていただいて、ありがとうございました。先輩がいてくださったおかげで、部活が楽しかったです」
部室を出たときに、夕陽が射し込む廊下で、3年生の先輩方に声をかけた。
「受験勉強があるから大会は見に行けないけど、応援してるからね」
田中先輩が頭を撫でてくださった。
なんだかちょっと涙が滲んできてしまい、慌ててぐっと目に力を入れて堪える。
今生の別れでもないのに、泣きそうになるなんて子供みたいだ。
「倫太郎があんな感じだからなあ。再来年の部長は永瀬さんだな。よろしく頼んだぞ」
「はい」
部長の言葉に、気が引き締まる。
それから程なくして、先輩と別れた。
素敵な先輩方の受験がうまくいきますように。
そう願いながら帰り道を歩いた。