隣の圏外さん


「はい、お待たせ」

「ありがとう」

 1つを凛ちゃんに渡し、確保してくれていた席に座った。


 模擬店のテントを眺めながら、凛ちゃんに話しかける。


「この前3年生の教室に行ったときは空気がピリッとしてて緊張したけど、今日はそんな面影がないね」

「メリハリをつけているんだろうね。今日は受験勉強の息抜き、って」


 とは言え、よく観察すると暇そうなクラスでは単語帳か何かを開いている人もいるようだ。


「うちの学校って体育祭も文化祭も遅めだよね。1学期に両方を済ませる高校もあるらしいのに」

 進学に力を入れているわりには、行事の時期を早めていないのが不思議だ。


「まあでも3年生の模擬店って、それほど準備に時間がかからないのかもよ? 混ぜて焼くだけの簡単な調理だから練習もそんなに必要じゃないだろうし」

 凛ちゃんが顎に手を当てながら答えてくれた。


 なるほど、だから3年生が模擬店担当なのかな。

他に考えられるのは、衛生管理の観点からだろうか。3年生の方がちゃんとできるだろう、みたいな。

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