隣の圏外さん


「おめでとう。よかったじゃん」

 梓が声をかけてくれたので、私も彼に近づく。


「凄い。梓って何でもできちゃうんだね! 梓のおかげだよ、ありがとう」

「何でもではない。それに打ったのは永瀬だ」

 ほとんど梓にやってもらったようなものなのに、謙虚だなあ。


 そう思っていると、さっきまでガサゴソと袋を探っていた2年生の先輩が近づいて来られた。

「はい、おめでとう。これ景品」

「ありがとうございます」


 お礼を言って受け取る。

 駄菓子だ。好きな味のスナックで嬉しい。


 顔を上げると、私の手にある駄菓子をじっと見ている梓がいた。

 これ、欲しいのかな。

 梓のおかげでゲットできたのだから、梓がもらうべきだよね。


「はい、これ」

 梓に景品の駄菓子を差し出すと、彼はそれを押し返すようなジェスチャーを見せて笑った。


「だから、永瀬が当てたんだから、永瀬の。それに、そんな嬉しそうな顔しているのを見てもらえるわけがない」

 えっ、そんなに顔に出ていたかな。

 駄菓子で喜ぶなんて幼いって思われたかも。


「好きなの? コーンポタージュ」

 梓が首をかしげた。

「うん」

「じゃあ覚えとこ」

 梓はそう言って去った。


 そしてこのクラスの先輩からおもちゃの銃を受け取っている。

 梓と梓の友達も、これからやるらしい。

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