隣の圏外さん


 終わった梓がこちらを見たので、遠くから口パクでゆっくりと、おめでとうと伝える。

 すると梓は口角を上げて手を振ってくれた。


「行こっか」

 凛ちゃんに声をかけて教室を出る。


 さっきまで美人の先輩と親しくしている梓を見て暗い気分だったのに、こうして梓と言葉を交わしただけで、気持ちが舞い上がってしまう。


 私を落ち込ませるのが梓であれば、そこから私を引っ張りあげるのもまた、梓なのだ。

 こんな風に、梓のことで感情を左右される自分に、気づかない振りをしていたけれども、認めざるを得ない。


 梓が他の女の子と仲良くしているのを見て、嫌な気持ちになるのも。

 梓が私に笑いかけてくれるだけで、そんな憂鬱な気持ちが吹き飛んでいくのも。

 すべて、梓が好きだからだ。


 私は、梓のことが好きなんだ。

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