隣の圏外さん


「お! 永瀬さん」

 もう一度中庭に戻ると、田中先輩の姿があった。

 田中先輩のクラスは豚汁を売っているらしい。


「2人分、お願いします」

「はーい。そう言えばさっき永瀬さんのクラス行ってきたよ。私らが時間内にクリアできなかったら倫太郎のやつ、にやにやしてんの」


 苦戦している人を結構見かけるので、難しめなのかもしれない。


「あはは、すみません」

「ちょっとイラッとしたから、あとで豚汁買いにこいって言ったんだけど、来ない!」

 田中先輩は冗談めかして憤怒の表情を作って見せた。


「いやあ永瀬さん、ありがとうね。若い子たちはたんとお食べ」

 田中先輩はそう言って鍋の底から具をたくさんすくい上げ、カップのギリギリまで豚汁を注いでくださった。

「わ、ありがとうございます」


 チケットを渡して豚汁を受け取り、お昼にいたベンチに座りに行く。さっきよりは空いている。

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