隣の圏外さん
「はい、結衣子の分」
気づかぬうちに凛ちゃんが戻ってきたようだった。
「ありがとう」
顔を上げてクレープを受け取る。
「どうしたの。そんな思い悩んだ顔をして」
「ううん。何でもない」
私がそう答えると、凛ちゃんはふーっと鼻で大きく息を吐いた。
「何かあったら、遠慮しないで話してよね」
凛ちゃんは口を尖らせてる。
その表情を見て、余計な心配をかけてしまったかな、と思った。
そして同時に、話してもいいのかな、とも思えた。
私も、もし凛ちゃんが誰かに聞いてほしい悩みを抱えていたら、1番に話してほしい。
遠慮せずに。
そう考えた次の瞬間には口を開いていた。
「私、好きな人ができたんだ」
言った直後に、他の人に聞かれていないか、周囲を見回して確認する。
近くに人がいないとわかってホッとした。
「ほうほう」
凛ちゃんは心なしか嬉しそうに見えた。
というより、ちょっと楽しそう……?