隣の圏外さん


「凛ちゃんって、大人だよね」

「どうしたの、急に」

「いろいろ知っていたのに、何も言わずに見守ってくれていたんだなあって」

「あー。まあ、私もそういう話題で周りにからかわれたり茶化されたりしてうんざりしたことあるからさー。だから、結衣子が何も言ってこないってことは放っておいてほしいのかなって」


 なるほど、そういった経験があったからなんだ。

 凛ちゃんのように可愛い子の恋愛事情は、周りもつい気になってしまうのかもしれない。


 それにしても、そういう風に想像力を働かせて黙っていてくれて、優しいなあ。


「凛ちゃんは好きな人、いないの?」

 私は少し緊張しながら尋ねた。


「残念ながらいないんだよねー」

 凛ちゃんは首を横に振る。


 もしかして、被っていて言いにくくさせた、とかじゃないかな。

 不安に思って凛ちゃんを見つめると、頭に手が伸びてきて撫でられた。


「隠しているんじゃなくて。本当にいない」

 凛ちゃんは困ったように笑う。


「そうなの? もしかしたら、凛ちゃんも梓が好きかも、って思っていたんだけど」

「いや、ないない。確かにイケメンだとは思うけど、何と言うか、ビビッとこないんだよねぇ。タイプの顔じゃないのかも」


 その言葉を聞いて肩の力が抜けた。

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