隣の圏外さん
「それより、花火大会はどうだったの」
凛ちゃんの質問を受けて、花火大会の日のことをかいつまんで話す。
すると、全部を聞き終えた凛ちゃんが眉をひそめた。
「はあああああぁぁ?」
ぎょっとしてしまう。
凛ちゃんは周囲を確認した後、再び声を潜めた。
「あっ、ごめん。……いや、寺元君、何やってんの。男女が2人で花火大会に出かけて、手を繋いだだけ? チューの1つや2つ、してきなさいよ!」
凛ちゃんは不満げな様子だ。
「そういうものなの?」
「少なくとも私は、誘ってきたわりに大胆さが足りないなと思った。まあ、結衣子からの報告が『彼氏ができた』じゃなくて『好きな人ができた』だった時点でなんとなく察したけど」
普通は、そうなのだろうか。
私は手を繋ぐだけでいっぱいいっぱいだったので、あれでよかったのだけれど。
何はともあれ、一般的にそういうものなのであれば、梓の一連の行動は、脈アリだと勘違いしてもおかしくないと言えるだろう。
勘違いしかける自分が恥ずかしいと思っていた。
でも、2人で花火大会へ行くこと自体がそういった意味を持つのなら、当然のことかもしれない。
そう考えて、ちょっと安心した。