隣の圏外さん


「あ、こちら彼氏の秋津登一(あきつといち)くんです」

 お姉さんは常盤君に、一緒にいる男性を紹介した。


「姉が迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします」

 常盤君はその秋津さんという人に深々と頭を下げている。


「いえいえ、こちらこそ。しっかりした弟さんだね」

「ちょっと! なんで私が迷惑をかける前提なの」

 お姉さんが常盤君に抗議する。


「絶対にそうとしか考えられないから」

「あはは。それにしても、佳煉(かれん)ちゃんの話を聞いて可愛い系の弟さんを想像していたら、大きい子で驚いたよ」

 秋津さんが姉弟のやり取りを眺め、相好を崩した。

 佳煉さんというのは、常盤君のお姉さんのお名前だろうか。


 それから私はふたりに鉛筆とメモ用紙を渡して、案内役の人へ引き継いだ。

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