隣の圏外さん
放課後になり、和室を目指す。
実は候補は2つに絞ってある。そのうちの1つが茶道部だ。
「失礼します」
そう言って引き戸を開けると、中は既に人でいっぱいだったので驚いた。
皆が考えることは同じということだろうか。楽そうだし……。
「わあ、入部希望者の子たち? いっぱいだね」
後ろから声がしたので振り返ると、顧問の先生らしき人が入ってくる。
「とりあえず今日は先輩のお点前を見学してもらう形になるから」
先生の指示を受けて和室に正座した。
目の前の先輩は、流れるように道具を扱い、私たち1年生にお茶を点ててくださっている。
綺麗だな……。
しかし、段々と眺める余裕も失われてきた。
足の裏の感覚がなくなってきている。
そろそろヤバい。限界かも。
そう思っているうちに和菓子が運ばれてくる。
先輩がいただき方を教えてくださるが、言われた通りにするだけで精一杯だ。
お菓子は甘くて美味しい。美味しいのだけれど、足がピリピリしてそれどころではない。
お抹茶をいただき、最後に申し込みのプリントが配られ解放される頃にはとうに限界を超えていた。
他の1年生たちもすぐには立てない様子である。
思っていたよりハードな部活のようだ。