隣の圏外さん
次のお客さんは、凛ちゃんのお母さまと妹さんだった。
軽く挨拶をして、控え室へ凛ちゃんを呼びに行く。
そして受付に戻ると、自分の母親の姿があった。
「お母さん! 来てくれてありがとう。ちょうど今、凛ちゃんのお母さんと妹さんがいらっしゃったから、チームになってもらって」
1人でのクリアするのはほぼ不可能なので、母親とチームになってもらえないでしょうかと、凛ちゃんのご家族にお願いした。
快くご承諾いただき、親同士で挨拶している。
それが済むと、母は私に耳打ちした。
「で、花火大会へ一緒に行った子ってどの子?」
お、お母さん。もしやそれが目的で……?
「今奥の方でカップルに説明してる人」
小声でそう返すと、母は満面の笑みになった。
「あらやだ、イケメン!」
何と言うか、めっちゃ楽しそう。
もしかして恋バナ好きなのかな。
また案内係のもとへ誘導した後、お客さんを見守る。
「皆いいなあ、きょうだいがいて」
ついそんな言葉をこぼした。
「いやあ、喧嘩することも多いよ」
凛ちゃんがそう言いながら控え室に戻っていく。
ひとりっ子からすれば、そのきょうだい喧嘩すらも貴重な体験のように思えるのだ。