隣の圏外さん


 中間試験が始まると、また名簿順の席になったので、梓とは隣同士だった。

 これを好機だと思った私は、いつもより積極的に、休み時間には欠かさず梓に話しかけた。


 と言っても内容は、テストの出来がどうだったかとか、翌日の試験科目の勉強は進んでいるかとか、色気のない話になってしまったけど。


 これくらいの距離感なら、クラスメイトとして普通の範疇だろう。


 梓はどう思っているかな。

 何も思っていないかな。

 少しくらいは、前より好意的だな、と感じてくれていればいいな。


 ちなみに心配の種である数学だが、今回の範囲は梓に教えてもらった範囲の延長線上にあった。

 よって基礎をしっかりと叩き込まれたおかげか、さほど苦しむことなく乗り越えられた。


 平均点をほんの少しだけ上回るくらいの出来だったけど、前回は補習に引っかかった人間だと思えば、大健闘した結果である。


 けれども、父親には一度も褒められることなく、間違えていた部分に対してネチネチと小言を並べられた。


 まあ、それでもいいや。

 私が自分で自分のことを褒めてあげればいいのだ。

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