隣の圏外さん


 翌日の放課後は放送室に向かった。

 2つ目の候補は放送部だ。


「失礼します」

 昨日と同じようにひと言断りを入れて中に入る。


 人が少ない。昨日とは大違いだ。

 手持ち無沙汰で立ち尽くしていると、女の先輩がこちらに気づいたようで駆け寄ってきてくださった。

「もしかして体験の子?」

「あ、はい。そうです」

「わー嬉しい! うーん、どうしよっか。いつもこんな感じでゆるい部なんだよね」

 そう言って目の前の先輩は苦笑いを浮かべている。


 よくよく周りを見てみると、発声練習をしている人もいれば、絵を描いている人や勉強している人、雑誌を読んでいる人がいて、部活動というより自由時間と言った方がしっくりくる。


「あ、そうだ。いつも来た人からやるやつをやってみよっか」

 先輩はそう言いながらプリントを取り出して私に見せた。

 滑舌練習のメニューや早口言葉が書かれている。

「まずはロングトーンから。腹式呼吸で……」

 先輩の指示通りに声を出す。

 おお。何となくそれっぽい。ちょっと恥ずかしいけど。


「とりあえずこんな感じ。これが終わったらあとは自由時間みたいになってる」

 一通り練習を終えると先輩はそう言って笑った。

「一応大会に挑戦もできるよ。よかったらぜひ入って」

「考えてみます。ありがとうございました」

 発声練習を終えるとやることがなくなったので放送室を後にした。


 それほどきついことはしないような気がする。

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