隣の圏外さん
「いやあ、倫太郎君も参加する日が来るとはね」
隣を歩く倫太郎君に話しかけた。
「俺もビックリだよ。人前に出るの、好きじゃないのに」
「そうなの? あまり気にしなさそうに見えるのにね」
「うん。だからなかなか寝付けなくてさ。寝坊した、ごめん」
倫太郎君はそう言うと、あくびをした。
「さっき先生もおっしゃっていたけど、ほとんど変わらないから気にしなくていいよ」
苦手なのに、挑戦しようって思えたんだなあ。
倫太郎君のことだけど、なんだか私も嬉しくなる。
「なんで出る気になってくれたの?」
「最初は基礎練もサボってたんだけど、先輩と永瀬さんを見ていたら、ちょっとやってみようかなっていう気になった」
「へー」
それを聞いて頬が緩んでしまう。
「それで、練習してるのに、その成果を発揮するのが学校内だけってのは、割に合わないなって考え直した」
損得の考えになっているのが、いかにも倫太郎君っぽい。
「1人じゃ心細かったから、倫太郎君も参加してくれて嬉しいよ。ありがとう」