隣の圏外さん
マイクの位置を調整する間、前回の大会のときとは違い、自分がいくらか落ち着いていることに気づいた。
自分より緊張している人を見たからかもしれない。
そんなことを考えながら、エントリー番号と氏名、著者名、そして作品名を告げる。
朗読している最中も、おそらく最適な速さで読めているなとか、ここから先は倫太郎君に注意されたところだから気をつけようとか、全体を見て考える余裕があった。
たまたま自分の調子が良かっただけなのか、成長したのかはわからない。
それでも、納得のいく朗読ができたことは確かだ。
私はその満足感をじっくりと味わいながら退場した。