隣の圏外さん
誰でも持ち得るものであり、でもどれ1つとして全く同じ色は持たないであろう、感情というもの。
自分の感情は、自分にしかないものだ。
だからこそ、自分自身がそれを自覚し、理解してあげる必要があるだろう。
嬉しいときは、その気持ちをしっかり嚙みしめておかないと、すぐにどこかへ流れて行ってしまう。
それはきっと哀しいことだ。
せっかくのプラスの感情は、味わい尽くさないと。
もちろん、時にはマイナスな感情だって重要な意味を持つだろう。
自分がどんなときに嬉しくなって、どんなときに悲しくなったか。
何が好きで、何が嫌いか。
自分の心を、これからはしっかり見つめていきたい。
「……って朗読は感情を表現しすぎない方がいいらしいから、効果があるかはわからないんだけど」
最後は照れくさくなって、話をそう結んだ。
「まあ、俺は永瀬さんのそういう真摯な考え方、嫌いじゃないし、良いんじゃない」
倫太郎君がそう言ってくれたところで、顧問の先生と落ち合った。