隣の圏外さん


「2人ともお疲れさま。はい、これ講評」

 それぞれに紙が渡される。


「ありがとうございます」

 受け取って自分の講評を読んだ。


 声質が良くて聞き取りやすいって書いてある。

 その文を見たとき、同じようなことを言ってくれた梓の顔が思い浮かんで、胸が熱くなった。


 続きを読むと、内容が本のテーマに合っていて良い、と書かれている。

 そして、内容をよく理解した読み方ができている、とも。


 自分が力を入れたところで褒めてもらえて、視界がぼやけてしまう。

 ……落ち着こう。


 読み進めると、サ行の聞き取りにくいところがあると書かれている。

 最後には、文末が消えがちなので注意すること、と記されていた。


 先輩や倫太郎君に注意されたことは意識できていた一方で、その他の部分で評価を落としてしまったらしい。

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