隣の圏外さん


「結局、永瀬さんの考え方がよかったってことじゃん?」

 倫太郎君は私の講評の紙を返しながら微笑んだ。


 小さなことでも、認めてもらえると、やっぱり嬉しいな。


「お二人さん、好きなの選んで。ご褒美」

 顧問の先生が自販機の前で立ち止まった。


「やった! ありがとうございます。私、これがいいです」

 私はコーンポタージュを指差した。

 寒くなってきたのでラインナップに追加されいる。


「俺は、これで」

 倫太郎君は黄色い炭酸飲料を受け取って、先生にお礼を言った。

 前にも同じのを飲んでいた気がする。


「自分も出た後の方が、美味いね」

 倫太郎君がひとくち飲んだあと、小声で呟く。


 しっかりその言葉を聞き取った私の胸の内には、温かいものが充満していった。

< 158 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop