隣の圏外さん
「私は2回目でやっともらえた賞なのに、倫太郎君は初めてでもらっちゃうんだもんなあ」
駅までの道を歩きながら、倫太郎君に話しかける。
「3年生がいなくなった影響もあるでしょ。ぶっちゃけ予想以上に緊張したし、これは駄目だと思ったけど」
「あはは。それに関しては、意外と倫太郎君にも可愛いところあるんだなって思ったよ。でも、ちゃんと声は出てたもんね」
私がそう言うと、倫太郎君はきまりが悪そうな顔をした。
「もう本番の記憶が曖昧」
倫太郎君が自嘲気味に笑う。
「倫太郎君って卒なく物事をこなすイメージがあるけど、そういうところは私と一緒なんだって安心した」
「そう言うけど、永瀬さん、今回は落ち着いていたよね?」
「うーん、少しは慣れたのかなあ」
別れ際、足を止めて倫太郎君の方を見た。
「次は優秀賞をもらって全国大会に行きたいね。倫太郎君も、また一緒に出よう」
意気込んで話しかけたけれども、倫太郎君は無表情のままだ。
「考えておく」
大会に出た後でも、つれないところは相変わらずらしい。