隣の圏外さん
電波強度 -90dBm
次の日、家を出ようとしたところで、母親に声をかけられた。
「お父さん、次の大会はいつなんだって言っていたわよ。一度見に行った方がいいかなって」
見てから判断しようと思ってくれたのだろうか。
「えー。恥ずかしいし、わざわざ見に来なくていいよ」
全国大会ならまだしも、規模の小さい大会で参観に来られると気まずい。
「厳しく当たっている割には、結衣子に嫌われるのが悲しいみたいね。ふふふ」
母は口に手を当てて笑った。
少しは私に歩み寄ろうと考え直してくれたのかもしれない。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
家を出て、駅へ向かい、電車に乗る。
そして電車に揺られ、窓の外を眺めながら、昨日のことを思い出していた。