隣の圏外さん
私が先輩の横を通って教室に入ろうとすると、ちょうど中から梓が出てきた。
「これ、昨日忘れていったやつ」
梓が先輩に、ヘアアイロンを差し出している。
「ごめんねー、ありがとう。じゃ、またね」
黙って2人の横を通り過ぎると、背後から先輩のそんな言葉が聞こえてきた。
忘れて、いった。
梓の言葉を反芻する。
大きいヘアアイロンって、たぶん泊まり掛けじゃないと持ち歩かないよね。
梓の家に、先輩が?
梓と先輩って、そういう関係なの?
崖から突き落とされたような気分になりながらも、考えるのを止められない。