隣の圏外さん
自習室になっている部屋の中を2人で覗く。
「今日は人が少なめだな」
梓がひそひそと話した。
それでも、人がいないわけではない。
自習室で会話をするわけにはいかないので、私たちは建物に入ってすぐのところに置かれているテーブルで勉強することにした。
「で、どこがわからないの」
「今回はほぼ最初から理解が曖昧です」
「まじか」
梓はそう返しつつも、夏のときみたいに、優しく丁寧に、順を追って説明してくれた。
好きな人に勉強を教えてもらえるなんて、とても贅沢だなあ。
しかも、わかりやすいし。
横に座っている梓の顔を、つい何度も見てしまう。
鼻筋が通っていて、睫毛も長い。
羨ましいくらいだ。
「聞いてる?」
梓が見透かしたような顔で笑った。
「聞いてます、はい!」
駄目だ。
せっかく教えてくれているのだから、ちゃんとついていかないと。