隣の圏外さん


「これ……」

 私がそのシャーペンを差し出すと、梓は少し気まずそうにそれを受け取った。


「ああ。中学のとき、永瀬に借りたやつだな。返そうと思って声をかけたら『もういらない。捨てておいて』って言われたやつ」


 そうだ。

 貸した日にあの会話を聞いてしまって、次の日返そうとしてくれた梓に冷たく当たってしまったんだっけ。


「まだ持っていてくれたの?」

「そりゃあ。じゃあ捨てます、とはならないな」


 私、嫌な態度をとってしまったのに。


 梓にとっては、本当にただ恋愛対象外であるというだけの話だったのだろう。

 こうして捨てずに持っていてくれるような人だ。

 ちゃんと友達だとは思っていてくれたはず。


 それなのに、拗ねて梓を遠ざけていた自分が恥ずかしい。

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