隣の圏外さん
「ち、違うよ」
慌てて否定する。
倫太郎君は言いふらすような人ではないだろうけど、変に気を回されたくない。
「俺、協力したのになー」
今度はからかうような口振りだ。
昨日、倫太郎君が辞退したのは、そういうことだったんだ。
「本当に、梓のことは好きじゃないから……!」
ムキになって私がそう返すと、倫太郎君の動きがピタッと止まった。
「あ」
倫太郎君は遠くの方を見て、不味いとでも言うような表情を浮かべている。
どうしたのだろう。
そう思って、私も倫太郎君の視線の先を辿る。
そこには梓がいた。