隣の圏外さん
決戦の日
バレンタイン当日の朝、教室に入ってきた梓を見てぎょっとしてしまう。
既に女の子から貰ったと思われるお菓子をたくさん抱えていたのだ。
そこにクラスメイトの女子から新たにチョコが追加されていく。
「はい、これ梓の分」
「私もあげるー」
「私も私も」
「わっ、ちょっ! よっと。ありがと」
梓は上乗せされていくチョコのバランスをとっている。
こんなにたくさん貰っている人を初めて見た。
「名前書いてある? さすがに覚えきれないんだけど」
「あはは、これだけ貰っていたらお返し大変でしょ。別にいいからね」
あんな感じで気軽に渡して受け取ってもらえるのだとしたら、少しは気が楽かもしれない。
でも、私のだけ受け取ってもらえなかったらどうしよう。
そんな可能性を考えて、つい弱気になってしまう。
それに、もし貰ってくれたとしても、私のもあの内の1つになるんだなあ。
そう考えると、なんだかちょっぴり面白くない。