隣の圏外さん


 もちろんあの中にも本命チョコはあるのだろう。

 でも、今みたいに友チョコとして渡されたものも、そこそこ多いはずだ。

 私のも、それらと同じような感じで渡したと思われちゃうのもな……。


 そうしてうじうじしているうちにも、時間はどんどん過ぎていく。


 やばい。

 時間が進んでいくにつれて、どんどん焦りが出てくる。

 なかなかタイミングが掴めない。


 結局私は、放課後になっても渡せないままでいた。


 いろいろ気にしても仕方がない。

 細かいことで悩んでも、渡せなければ本末転倒である。


 梓が帰ってしまう。

 その焦燥感から、梓に近づこうと1歩踏み出したところで、梓と目が合った。


 ドキッとして、固まってしまう。


 そして梓は私が手に持っている紙袋を一瞥した後、教室を出て行ってしまった。


 どうしよう。また渡せなかった。

 せっかく作ってきたのに。

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