隣の圏外さん


「帰したくないけど、帰らないとな。親御さんが心配する」

 梓はそう言って私の手を取った。


「明日も会えるよ」

 私がそう言うと、梓は穏やかに笑って頷いた。



「梓って中学生の頃も、私のこと好きでいてくれたの?」

 梓と並んで帰り道を歩きながら、問いかける。


「むしろ気づかれてなかったことが心外なんだけど」


 そんなの、わかるわけないよ。


「中一の秋ぐらいだったかな。梓とサッカー部の人たちがクラスの女子をランキング付けしているのを聞いたから」

 私がそう言うと、梓は眉をひそめた。


「あのときの梓、私は圏外だって言ってた」

 梓を恨みがましい目で見てしまう。

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