隣の圏外さん
「常盤君ってどうして放送部に入ったの?」
田中先輩の説明をひと通り聞き終えたところでさりげなく尋ねてみる。
見るからにやる気がなさそうだったので、気になった。
私もゆるそうな部活の中から選んだから、人のことをとやかく言えないけれど。
「楽そうだし」
常盤君はジュースを飲みながら答えた。予想通りだった。
「やっぱりそうだよねぇ」
他の先輩もほとんどがそうみたいで、うんうんと頷いている。
「その身長を活かさないのはもったいない気がするけど。バスケとか似合いそうなのに」
「それはよく言われる。けど俺、そんなに運動神経よくないんだよね」
常盤君はそう言いながら頭をかいた。
「まあでも部活は入っといた方がいいかな、みたいな。もしかしたら推薦で大学受けるかもしれないし」
「それなら大会も出といた方がいいんじゃないの?」
「いやそれは面倒。何でも馬鹿正直に喋る必要はないんだし、そういうのは多少盛っていい感じに話せる程度にしとけば何とかなるんだから」
そういうものなのだろうか。
すぐに顔に出てしまうような私には到底できなさそうな芸当だ。
「ほどよく手を抜いて、要領よく生きるのが俺のポリシー」
常盤君はそんな風に豪語している。
そのままとりとめのない話で談笑し、下校の合図のチャイムが鳴ったところでお開きとなった。