隣の圏外さん
活動日に放送室へ行くと、既に常盤君の姿があった。
しかももう優雅に本を読んでくつろいでいる。
「早くない? 同じクラスなのに」
「終わった瞬間に出てきたから」
「凄くやる気のある人の発言みたい」
なんだろう。ここの居心地が良くて気に入っているのかな。
「ってか私、発声練習していいの?」
本を読んでいる人の前でやるのはちょっと気が引ける。
「あー、どうぞどうぞ。俺、雑音があった方集中できるタイプなんで」
「そ、そう?」
そう言われればやるしかない。
未だに羞恥心が湧いてしまうし、慣れないけれども、大会に出るからにはちゃんとやっておかないと。
まずはロングトーンで声出しをする。
ちらっと常盤君の方を窺ってみたが、視線はずっと本に縫い付けられている。本当に集中しているのかもしれない。