隣の圏外さん
あれから梓がむやみに話しかけてくることもない。
あれは何だったのだろう。
挨拶みたいなもの? 揶揄っただけ?
いろんな考えが頭の中をぐるぐると巡った。
何にせよ、もうそろそろ期末テストの時期である。そちらに集中しないと。
授業中は先生の話をよく聴き、しっかりとメモを取ってはいるが、数学に一抹の不安を覚えていた。
現に、試験範囲に指定されている問題集を解いてみても、初見の問題では必ず躓いてしまう。
ただ数学ばかりに勉強時間を割くわけにもいかない。
確実に点数を取れる見込みのある科目を強化し、数学の勉強は基礎問題を落とさない程度にとどめることにした。
数学での失点を見越して、他の科目で高得点を狙っていくことで、全体ではそれなりの平均評定になるようにしていく、といった方針だ。
1年生のうちから良い成績を取っていかないと。そう思って気を引き締めた。
「明日から試験なので名簿順の席に戻るように」
試験前日のホームルームで担任の先生がそう告げる。
またあの席に戻るんだ。
そう思うと少し胸が弾んだ。