隣の圏外さん
こちらから話しかけることがなければ、向こうから話しかけてくることもなく、初日は過ぎていった。
そしてホームルームを終えて解散となると、前の席の子が急に振り返った。
「ねえ、名前は? 何て言うの?」
ショートカットの綺麗な子だ。
「あ……」
一瞬戸惑った。
横に帰り支度をしている寺元梓がいるからだ。
でも、意識したって仕方がないと思い直す。
「結衣子、だよ」
「結衣子ちゃんね! 私は凛花。凛って呼んで」
「凛ちゃん。……あの、私も結衣子でいいよ」
「オッケー、よろしく。あ、さっそくだけど連絡先交換しようよ」
初日から声をかけてもらえた事実にホッとする。
交換を終えて横を見ると、寺元梓はもう帰った後だった。