隣の圏外さん
「あ、そろそろだな」
梓が教室の時計を見た後、スマホを取り出す。
「え?」
「オープンキャンパスの申し込み。予約始まる時間」
そうだったんだ。ちゃんと調べられていなかった。
私もスマホを取り出し、大学のホームページを開く。
「高3生優先って書いてあるけど……」
「気にすんな。高3の夏になってから漸くどこの大学にしようかな、なんて考え始めた人間のことは」
「そうなのかなぁ」
それでもやっぱりこの機を逃すと参加できない受験生のことを思うと、遠慮した方がいいのではないかという考えが湧いてくる。
「優先とは書いてあるけど、他の学年は申し込みするなとも書いてない」
まぁ、それもそうか。
本当に駄目なら弾かれるだろうし、取り敢えず申し込もう。
私たちは、多しばかり図太くならなければ、欲しいものなど手に入れられないのかもしれない。
「予約できたわ」
「私もできた」
「んじゃまた再開な」
そう言って梓はまた問題集を解き始めた。
もう後半のページをやっている。夏休みの課題なのに、そのうち終えてしまいそうで恐ろしい。
途中で、私が詰まっていると気づいて、根気よく教えてくれる。
私がその後の補習で暇だと感じてしまうほどに、数学の力が向上したということは言うまでもない。