隣の圏外さん
「なんだこの成績は」
通知表が渡された日、家に帰ってそれを父親に見せたところ、たいそうご立腹の様子だ。
親の判子が必要だし、まぁそれ自体は自分で押すこともできたのだけれど、どのみち通知表の存在は知られているため逃れられなかった。
おそらく数学の成績のことを言っているのだろう。
他の教科は叱られるほど悪くはないと思うから。
「こんなことで大学受験は大丈夫なのか」
「補習に出たから、もうその部分は復習できてるよ」
「そもそも補習なんてものに引っかかるのが問題なんだ」
返す言葉もない。
「放送部なんかに入って遊んでいるからじゃないのか」
週に2日の部活が成績に影響しているとは到底思えないのだけれど、そんなことを言っても聞いてもらえないんだろうな。
それに、放送部に入ったのが悪いと言われているみたいで腹が立った。
でも、実際に数学の成績は悪かったわけで、自分の責任なので言い返すことができない。
「あまり酷いようだと退部も考えないとな」
判子は押してもらったので、返事をせずに部屋へ戻った。
退部させれば成績が良くなると思うなんて見当違いも甚だしいな、と心の中で悪態をつきながら目蓋を閉じた。