隣の圏外さん


 繋がれた手から、熱が伝わってくる。

 やばい。手に汗をかいてしまいそうだ。


 もしかして、体の別の部位に意識を集中させれば、そっちで代わりに汗が出て手汗がましになる、なんてことはないかな。


 既に顔が熱いけれども、顔に汗をかいてしまうのは不味い。それはそれで恥ずかしい。

 なんとか目立たない場所――そうだ、足! 足に集中しよう。手に汗をかくな、私!


 そうして私が必死に念じている一方で、梓はなんてことない顔をしているのだろうな。

 そう思って梓を見上げてみたが、私とは反対の方を見ていて、どんな顔をしているのかわからない。


 カランコロン、と下駄の音が響いている。


 私の下駄の音と、少し離れた場所から聞こえる下駄の音。

 スローテンポで響くそれらの音に耳を傾けながら、少しずつ心を落ち着けていく。


 家族連れの人や複数人の集団、友達同士、そしてカップル。

 あたりを見回すと、いろんな人たちがいる。


 その中で私たちは、人の目にはどのように映っているのだろう。

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