隣の圏外さん
「常盤君、おまたせ。ごめんね」
「いいよ。買いに行こっか」
ソフトクリーム屋さんのカウンターの横にあるショーケースには、たくさんのサンプルが並べられている。
常盤君はこれでもかというほどゴテゴテにトッピングされたものを頼んだようだ。
一方で、私はキャラメルソースのかかったものにした。
お代を常盤君に渡し、ソフトクリームを受け取って席へ戻る。
「常盤君、結構甘いもの好きなんだね」
「うん。それにいろいろのっかってる方が飽きないし」
溶けるといけないので、席に着くとお互い無言で食べ始めた。
「そういえば宿題終わった?」
6割ほど食べ終えた頃、夏休み中の常套句を投げかけた。
「いや? 全然」
あれ。さっき感心したところなのに。
「間に合いそうなの?」
「ものによっては間に合わなくてもよさそうなんだよね。この前姉が帰ってきたときにいろいろ教えてもらってさ。あの先生は宿題を出さなくてもテストで良い点を取れば良い成績がついたとか、あの先生は未提出だと張り紙を出してくるとか」
「お姉ちゃんも同じ高校だったんだ」
「去年までね」
そういうことを教えてくれるってことは常盤君に似た性格だったりするんだろうか。
「まぁなんだかんだ言って復習になるし結局やることになりそうだけど」
参考書を買うくらいだから、サボるというよりは、自分にとって効率的だと思う勉強をするのだろう。
私もせっかく梓に勉強を教えてもらったのだから、それを無駄にしないように頑張ろう。