隣の圏外さん
2学期
準備期間
夏休み明け、教室に入り自分の席に着くと、凛ちゃんが声をかけてくれた。
「久しぶり! って言っても、この前会ったからそんなにかな」
「そうだね。あのときはありがとう。楽しかった」
凛ちゃんとはフードコートで会った数日後に2人で遊んだので、他のクラスメイトに比べれば久々な感じはしない。
隣で椅子を引く音がしたので横を見ると、梓が来たところだった。
「久しぶり」
「うん。久しぶり」
目が合ったので挨拶し合うもそれっきりで、会話するわけでもない。
花火大会の日以来、初めて会うので少しドキドキしながら登校したけど、いつもと変わらない。
いつも通りの梓だった。
あの日の花火のように、私の淡い期待も散って消えていってしまう。
以前の距離感に逆戻りってことは、梓は楽しくなかったのかも。
そんな考えが頭から離れなくなる。
それから、帰りのホームルームですぐに席替えをすることになった。
くじを引いて席を確認したら帰ってよい、とのことだ。
「前から2列目か……」
嬉しくはないけど、黒板が見えやすいという意味ではいいのかもしれない。
「えっ、結衣子2列目? 私も2列目! あー、でもそんなに近くないね」
凛ちゃんがくじの番号と座席表を照らし合わせながら言う。
「梓、1番後ろなんだ? 羨ましい」
聞こえてきたクラスメイトの声で梓とも離れることがわかった。
ついてないな、と思ってしまう。
――ついてない? 私は何を期待していたのだろう。