隣の圏外さん
「それ、何?」
常盤君が紙を見て何やら考え込んでいる様子だったので、覗き込んでみる。
勉強ではなさそう。
「謎解き。この前脱出ゲームに行ってきてさ。そのときにおまけで貰えたんだよね、これ」
「へー。面白い?」
「そこそこ。でもあまり練られてなくて自分でも作れそうな感じ」
見た目は宝の地図のようなデザインで面白そうに見えるけど、慣れている人には簡単に感じてしまうのかもしれない。
あ、そう言えば大会のことを聞くんだった。
「常盤君、11月に新人大会があるらしいよ。出ようよ」
「パス」 即答だった。
唖然としてしまう。嘘でしょ。
「この前の大会のとき、考えとくって言ってたのに! 1秒で答えを出さないで、もうちょっと考えてよ」
「大会の後から、聞かれる直前まで考えてた」
屁理屈だ……。
「常盤君まで出ないと私、先生と2人だけで挑むことになっちゃうんだけど。出ようよー」
つい駄々っ子のように机を揺さぶってしまう。
「頑張って」
常盤君はこちらを見ることなくそう言った。
取り付く島もない。
常盤君に参加しようという気を持ってもらうことは、思っていたよりも難しそうだ。