隣の圏外さん


 ふと常盤君の手元を見ると、どうやら文化祭用の謎を考えているようだった。

 側には、たくさんの謎解きの本が積まれている。


「謎の準備はどんな感じ?」

「もうそろそろ出来上がりそうだから、そのうち小物の製作に取りかかってもらえるよ」


 今は先に特に指示を必要としない装飾品や、メイド喫茶を提案していた子の管理下で衣装の作製を進めている。

 メインである謎解きの小物の製作も始まると、忙しくなりそうだ。


「さすがだね。ありがとう」

「誰かさんのおかげで忙しかった」

 これはクラスで常盤君の名前を出したことを言っているのだろう。

「えっ! ごめん」

 矢庭に謝る。


「嘘嘘。こんな機会もそうないし、楽しかったよ」

 常盤君は冗談だ、とでも言うように手を左右に振った。


 責められても文句を言えない状態だったので、そう言ってもらえて少し安心だ。

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