隣の圏外さん


「おやおやー? 我らが放送部の後輩である倫太郎が、同じく放送部の後輩女子を連れているゥ! 好きな人というお題でも引いたのか? いったいどんな内容だったのか気になって、先輩は今夜眠れそうにないぞオオォ! どうなんだ、倫太郎!」

 これは田中先輩の声だ。


「田中先輩、絶対に違うってわかって言ってるよね」

 今までこのような、当人たちが気まずくなりかねないアナウンスは為されていない。

 だから、冗談の通じる相手であるという安心感から生じたからかいなのだろう。


「俺もそう思う」


 張り直されたゴールテープを2人で切る。


 3着だった。

 半分より前なので、運動が苦手な人間からすれば御の字である。これはくじ運に依るところが大きい。


「常盤君って、好きな人ってお題を引いたら、全く違う人を連れて行きそうなタイプに見えるもん」

「さあ。わからないよ?」


 常盤君が意地悪そうな笑みを浮かべたので、彼が手に持っているお題の紙を取り上げて見てみると「同じ部活の人(帰宅部なら帰宅部の人)」と書かれていた。


 そのままその紙を体育祭実行委員の人に渡して、ゴールした人たちの列に加わる。

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