隣の圏外さん
常盤君と別れて、入場待機ゾーンへ向かう。
100メートル走、嫌だなあ。
そう思いながら順番を待っていたけれど、実際のレースはそれほどつらいものではなかった。
私のレースの放送担当は2年生の先輩だった。
「トップを走るのは黄組! 皆さんあのお星さまに願い事をしてください。彼女が1位になった暁には皆さんの願い事が叶います。あ、やば。プレッシャーをかけちゃったかな。あ、無事流れ星の彼女が1位です! おめでとうございます! 皆さんに幸運をもたらした彼女に拍手」
拍手の音が響く。
田中先輩ほどハイテンションではないけれど、2年生の先輩も影響を受けたようなアナウンスになっている。
実際に走ってみると、これが後方を走るものにとって心地よいものであると気づいた。
たぶん皆は前方を走っている人に気を取られていて、後ろの方にはさほど関心が向いていないということを肌で感じるからだ。
5着の紙を受け取って、並び、退場する。